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リッチ・アンド・ストレンジ(おかしな成金夫婦)

Rich And Strange(1931年/イギリス/83分)

[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]デイル・コリンズ
[脚本]アルマ・レヴィル
[撮影]ジョン・コックス
[音楽]ハル・ドルフィ
[出演]ヘンリー・ケンドール、ジョーン・バリー、パーシー・マーモント、ベティ・アマン、エルジー・ランドルフ

[内容]

 平凡なサラリーマン、フレッドに突然叔母が大金をプレゼント。そこで妻エミリーと船旅をに出ることに。途中までは仲睦まじく観光を楽しんでいた夫妻。が、フレッドは偶然出逢ったプリンセスと恋に落ち、エミリーも紳士ゴードンから言い寄られ、二人の仲は急速に冷めてゆく ・・・。にわか成金となったある夫婦の悲喜こもごもをコミカルに描く。前半は取り留めのないコメディ、後半シリアスなドラマ、とややアンバランスながらヒッチコック得意の不倫劇で、人物描写で冴えを発揮。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 ロンドン。会社が終わり満員の地下鉄に乗って帰るフレッド・ヒル。内心では変化のない毎日に飽き飽きしていた。家には結婚して8年の妻・エミリーが待っている。フレッドは船に乗って世界を旅するのが夢だったが、エミリーはつつましやかで自分たちの家を持つのが夢だった。
 ある時、突然裕福な叔母から手紙が届く。フレッドが悩んでいるのを聞いて、旅行の資金として大金を送ってきたのだ。早速船に乗り旅を始めるヒル夫妻。パリでレビューを見て楽しい時を過ごすとマルセイユへ。そして東洋行きの豪華客船に乗船。が、海は荒れ、フレッドはひどい船酔いで寝たきり状態に。その間エミリーは紳士のゴードン隊長と知り合い親しくなっていく。やがてフレッドは回復。しかし偶然どこかのプリンセスと出会い、たちまち恋に落ちてしまう。
 そんな中船はエジプトに到着。フレッドはいつの間にか王女と二人きりに。それをさびしげに見つめていたエミリーをゴードンが認め、エミリーに言い寄る。再び船が出港し、スエズでの船上カーニバルでは夫婦の決裂は決定的に。やがてフレッドはエミリーと別れる決意を固める。一方、そんなフレッドに未練の残るエミリー。しかしゴードンがプロポーズをしてきて ・・・。

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COMMENT

 ヒッチコック初期のコメディ映画。お得意の不倫劇をメインのモチーフにしています。しかもダブル不倫ということで張り切った? わけではないのでしょうが、楽しい仕上がり。サイレントからトーキーへの過渡期の影響か、少ないせりふに字幕を巧みに織り交ぜて編集しています。これがかえって好バランスを感じさせ、本作の見やすさを実現しています。
 物語の主人公は、結婚8年のヒル夫妻。夫フレッド(ヘンリー・ケンドール)はしがないサラリーマン。冒頭、終業後の会社から吐き出され、満員電車に揺られるシーンは今も変わらぬ親しみのわくシーン。満員なのに食事をする奴や新聞を広げる奴、そんな日常の情景をユーモアたっぷりに描きます。
 そんなフレッドを家で待つのはつつましやかな妻リリアン(ジョーン・バリー)。そんな二人にフレッドの叔母から大金がプレゼントされます。なんとも脈絡希薄な唐突さですが、この唐突な展開はヒッチコック初期の作品の欠点でもあります。とにかくも、大金を使って船旅に出る二人、パリからマルセイユ、エジプト、スエズ、スリランカ、そして終着点シンガポール。その間互いに不倫を演じ夫婦仲は大ピンチに。何とか丸く収まったかと思うと今度は船が難破。内容盛りだくさん。しかも世界旅行という華やかな雰囲気で、当時はさぞわくわくする映像として見られたに違いありません。
 不倫劇が始まるエジプトあたりまでの前半は取り留めのないコメディ作品で、以降は終盤までシリアスな不倫劇が演じられます。フレッドはプリンセス(ベティ・アマン)を好きになり、リリアンは優しげな紳士ゴードン(パーシー・マーモント)に言い寄られます。フレッドはついにリリアンと分かれる決意。が、プリンセスにはとんでもない秘密があったという訳です。
 終盤では再びコメディ路線。が、今度は夫婦の愛を同時に描いていく粋な展開。構成的には雰囲気の違うモチーフが重ねられたため、ややアンバランスなイメージではあります。しかし字幕で区切ったためか、進行自体はなめらか。特に、初期のヒッチコック映画にしては人物描写がおとなしめで、これも好感度を上げた一因かもしれません。華やかさの割には小ぶりな感じもする本作ですが、個人的には好みの表現。わざとらしい派手さで疲れるより、このくらいだと気楽に見れてしまいます。ヒッチコックの隠れた小品と呼びたいところです。

(アイ・ヴィー・シー)
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アルフレッド・ヒッチコック関連作
(バルカン超特急、三十九夜)

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