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サボタージュSabotage(1936年/イギリス/76分)
cinema review ![]() STORY
水曜日。発電所が破壊工作を受けロンドン市内が停電。犯人のヴァーロック氏は何食わぬ顔で経営する映画館に帰宅し、夫人にはずっと部屋にいたとうそをつきます。が、隣の果物屋の店員、テッドが帰るところを目撃。実はテッドは潜入捜査官スペンサーでした。
木曜日。ヴァーロックは水族館へ行き、待ち合わせていたある外国人から、市長就任パレードが催される土曜日に、地下鉄に爆弾を仕掛けるよう指示を受けます。さらに教えられた鳥屋の主人に会うと、時限爆弾は当日渡すと知らされます。一方、テッドは夫人とその弟スティービーを食事に誘い情報を聞きだそうとします。しかし夫人は夫を無害で家庭的だと信じていました。 金曜日の夜。ヴァーロックの部屋に男たちが集合。テッドは部屋への侵入を試みますが見つかってしまいます。そこで客の一人が、彼は刑事だと指摘。ヴァーロックは自分が見張られていたことに気付きます。 土曜日。ヴァーロックに鳥かごが届けられます。その中には時限爆弾とメモ。そこには「1時45分に鳥は鳴く」の文字。焦ったヴァーロックはスティービーに爆弾を運ばせることを思いつきます。そして映写機の部品と偽って爆弾を渡し、映画のフィルムの配達の際、あるロッカーに置いて来るよう言うのでした。が、遊び盛りのスティービーは途中で道草を食ってしまい ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
大衆不安をかきたてることを目的とした破壊活動(妨害工作)を「サボタージュ」という、と、冒頭説明があります。労働争議における集団怠業の意味もあり、こちらの方が通りがいいかもしれません。また、日本語の「サボる」はここから生まれた造語ということですが、いずれにしても、その意味は本来のものとは大きく違っています。今では「テロ」の方がよく使われます。本作はそのサボタージュをモチーフにしたサスペンス劇。時代柄、緩慢さは残るものの、ヒッチコックのサスペンス手法を堪能できる一本でもあります。
物語はロンドンの停電から始まります。発電所への破壊工作が原因。続いて犯人の顔がアップで映し出されます。普段は家族を思いやり、社会秩序に従順な映画館主ヴァーロック(オスカー・ホモルカ)。一方、年若い夫人(シルビア・シドニー)はそのことを知らず、夫を見かけ通りの善人だと思い込んでいます。しかしヴァーロックはすでに警察がマーク。隣の果物店に刑事スペンサー(ジョン・ローダー)が潜入して見張っていたのでした。 物語はこの三者の様子を描いていきます。妻は夫が活動家とは知らず、夫は果物店の店員を刑事とは気付かず、刑事は妻も共犯と思い無実であるとは知らない。これらが、物語が進むにしたがって、互いが実は何者であるかを悟ってゆくのです。この過程の心理描写は本作の醍醐味のひとつと言えます。 そして物語にはもうひとり重要な人物が登場。妻の弟スティービー(デズモンド・テスター)。自分がマークされていると気付いたヴァーロックはスティービーに時限爆弾を運ばせ、爆破事件を起こそうと企みます。が、折しも市長就任パレードの真っ最中。行商や大道芸でにぎわう街中でスティービーは道草を食い、ついに途中のバスの中で爆発してしまうのです。 その時間1時45分。スティービーの無邪気な姿とは対照的に緊迫感に満ちたシーン。バスの中では子犬を使う演出まで使ってその悲劇性を高めています。サスペンスの基本的な手法が冴えたモチーフではないでしょうか。そして物語は、ここから一気に感情的な展開へと発展していきます。ついに夫の正体を悟り憎悪する妻。妻を脅し黙らせようとする夫。その妻を愛してしまいかばおうとする刑事。ラストは意外などんでん返しが待ち構えていることになります。 罪のない人間が死に、殺人者が罪を逃れる、というやや閉塞的な内容は、ヒッチコック前半の作品に見られた傾向と言えます。ヒッチコックの反社会性、とまでいくと言い過ぎかもしれません。一方本作は、世界恐慌やナチの台頭など、当時の社会不安が蔓延した状況を反映した内容にもなています。が、それを見やすいまでのエンターテイメント作品に替え、さらっと象徴させているあたりはさすがヒッチコックということができます。 |
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本作はイギリス時代後半の作品。この時期の代表作は何と言っても「バルカン超特急」ですが、このイギリス時代が大いに土台となって、アメリカでさらに大きな人気を博することになります。特に「海外特派員」や「逃走迷路」などを見ると、イギリス時代のつくりがグレードアップしている様子がわかります。
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