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三十九夜The 39 Steps(1935年/イギリス/86分)
cinema review ![]() STORY
その夜、ハネイはミュージック・ホールでのショーを楽しんでいた。舞台では記憶男、ミスター・メモリーが自慢の知識を披露していた。その最中、酔った客がけんかを始め客席は大混乱に。さらに銃声が鳴り響き、パニックとなった客たちは先を争って外へ逃げ出す。
その時ハネイは若い女性に声をかけられ家に連れて行くよう頼まれる。女はアナベラ・スミスと名乗り、自分はスパイで二人組の男に追われていると言い出す。ハネイは信じられなかったが、アナベラの言う通り外を見てみると、確かに二人の男が佇んでいた。そしてハネイは一晩匿うことにする。が、深夜、アナベラはナイフで刺されて殺されてしまう。その手にはスコットランドの地図が握られていた。 ハネイはアナベラの言葉を思い出す。スコットランドのアル・ナ・シェラ、敵のボスは小指がない男、航空上の機密が国外に持ち出されてしまう、そして「39階段」という謎の言葉。ハネイはこれが国の大事だと考え、みずからアル・ナ・シェラへ赴いて機密の漏洩を防ごうと決意する。 朝になり、外の二人を撒いて何とか列車に乗り込むことに成功。しかしアナベラの死体はすぐに発見され、ハネイは殺人犯として追われる羽目になってしまう。しかも、警察はハネイが北部行きの列車に乗ったことを突き止め、途中で乗り込んでくる。窮地に陥ったハネイは乗客の一人、パメラに助けを求めるのだったが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
ジョン・バカンの「三十九階段」(1915)の映画化。バカンはイギリスの作家で本作は代表作。スパイ小説の草分けでもあります。英題は小説と同じですが、邦題はなぜか「三十九夜」。ちなみに1959年には再映画化されていて、こちらの邦題は原題通りとなっています。この不思議なタイトル、三十九階段とは一体何か? 物語はこの謎を追いながら進行します。そして最後の最後に謎は明かされます。と言っても仰天するようなものではありません。この点ではむしろ営業的なモチーフ。プロットは、巧みにこの謎を利用して見る者の興味をひきつけていることが分ります。
冒頭は劇場での何でもない余興のシーン。メモリー氏が舞台に立ち、ご自慢の記憶力を披露します。ところが、本筋に関係ないと思われたこのメモリー氏は物語の最後に再登場。見る者を驚かせます。主人公ハネイ(ロバート・ドナート)は、この劇場でエージェントと自称する女と出会い匿うことに。が、彼女は殺され、ハネイが代わりに国家の機密を守るべく立ち上がるというわけです。手がかりはアル・ナ・シェラという場所、小指のない男、三十九階段という謎の言葉。しかしハネイは、敵の殺し屋のみならず殺人犯として警察からも追われる羽目になってしまいます。 物語は、後にヒッチコックが得意とする巻き込まれ型サスペンスを軸に、スパイ・スリラーや冤罪アクションの一面をものぞかせます。そしてロマンスも忘れずに、と、短い割には多面的に楽しめる娯楽作品と言えるでしょう。そのロマンスのお相手、パメラ(マデリーン・キャロル)はしばらく経ってからの登場。ハネイが無実だと訴える言葉を信じず、度々警察に通報。その度にハネイの決死の逃亡劇が盛り上がることとなります。見る側は、このパメラの石頭ぶりにイライラしながら展開を見守ります。思わず見入っている自分に気付くわけですが、このあたりは観客をスクリーンに引きずりこむヒッチコックの手腕の成熟を示すものでしょう。 さすがにスピード感は後の作品とは較べるべくもありませんが、この時代としては第一級であることには違いありません。同種類のプロットである「逃走迷路」や「北北西に進路を取れ」などと比較するとヒッチコックの手法の進化がよく分ります。そしてこの三年後にはイギリス時代の最高傑作「バルカン超特急」を製作。この作品はいまだに不朽のサスペンス映画として語り継がれています。 |
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