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シャイニングThe Shining(1980年/イギリス/143分)
cinema review ![]() STORY
コロラド。山中に建つオーバールック・ホテル。作家ジャック・トランスは、支配人アルマンから、冬の間ホテルに住み込む管理人の面接を受ける。アルマンは5ヶ月間、管理人一家が孤独に耐えられるか心配する。ホテルは冬の5ヶ月間、雪のために下界とは隔絶することになるのだ。現に10年前、管理人だったグレイディは二人の娘と妻を斧で惨殺。みずからも猟銃で自殺する事件が起こっていた。
やがてジャックは、ホテルに住み込むべく、妻ウェンディと息子ダニーとともにホテルを再訪する。そこでダニーは黒人料理人ハロランに出会う。ハロランはダニーに超能力があることを見抜き、自分も超能力者であることを打ち明ける。ダニーにはテレパシーや予知の能力があったのだ。そのダニーが237号室が怖いと訴える。するとハロランは、決してその部屋に近付かないように忠告するのだった。そこはグレーディが家族を殺害した場所だった。 一ヶ月後。ジャックは小説の執筆が進まずイライラしていた。そして妻に仕事中は近寄るなと八つ当たりしてしまう。この頃には雪が積もり始め、外出も不自由になる。電話も故障で通じなくなり、外界との唯一の連絡手段は森林警備隊への無線だけとなった。 ある時、一人で遊んでいるダニーの前に二人の少女が現れる。その瞬間、ダニーにはその二人が血まみれで倒れているシーンを幻視して恐怖する。その間にもダニーは237号室が気になって仕方がない。そしてついに部屋の中へ入ってしまう。 一方、ウェンディはジャックのうめき声を聞いて駆けつける。すると、夢でダニーとウェンディを殺した、いつか自分は気が狂う、と泣きつくのだった。さらに、そこに首に傷をつくったダニーが現れる。237号室を調べに行ったウェンディは、戻って来るとジャックに告げる。風呂に見知らぬ女がいる、と。それを聞いてジャックも237号室へ入って行くのだったが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
スティーブン・キング原作のホラーをスタンリー・キューブリック監督が映画化。見事なまでの恐怖映画に仕上げています。「シャイニング」とは、ここでは超能力を意味する言葉として用いられているようです。特に超能力がクローズアップされているわけではありませんが、超能力がもたらす悲劇がモチーフの一つとして使われています。そして全編に流れる音楽。入れすぎとも思えますが、恐怖感を見事に高めてはいます。今回は冒頭のベルリオーズをはじめバルトークなど。音楽へのこだわりもキューブリック流と呼べるでしょうか。
事件は、ある作家家族三人が冬のホテルの管理人となったことから始まります。下界との謝絶。雪のために密室となったホテル。作家のジャック(ジャック・ニコルソン)は静かに小説を書けると気軽に引き受けますが、小説はなかなか書けずイライラがつのってゆきます。そこにつけこんできたのが、惨殺鬼グレイディ(フィリップ・ストーン)の亡霊。ジャックをけしかけ、自分がしたのと同じように、息子ダニー(ダニー・ロイド)と妻ウェンディ(シェリー・デュヴァル)を殺させようとするのです。小説と仕事へのプレッシャーからか、ジャックは、徐々に発狂の度合いを強めていきます。ジャック・ニコルソンの、まさに迫真の演技でもあります。 物語を複雑にしているのは、まずダニーの超能力。ダニーはいちはやく幼い姉妹の惨殺現場を透視。そしてみずからの危険を感じたのか、遠くマイアミにいる同じ超能力者のハロラン(スキャットマン・クローザース)をテレパシーで呼び寄せようとします。さらにはジャックが見るバーテンダー、ロイド(ジョー・ターケル)。そして舞踏会の客たち。ウェンディもまた、いるはずのないホテルの客たちを目撃し恐怖するシーンがあります。グレイディとは別に、ホテルそのものが亡霊たちの巣窟になっていたことが終盤明らかにされます。しかし現実、ダニーが見る過去のビジョン、グレイディが見せる魔の世界。そしてホテルそのものが持つ亡霊の世界、と、様々な世界が複雑に交錯しており、ここにいつものキューブリック節を体感することになるわけです。理屈で割り切ることも可能ですが、おそらくはそれは狙いではないのでしょう。恐怖の理不尽さを感覚として伝えることが主眼ではなかったでしょうか。 この作品でキューブリックはこだわりにこだわります。執拗に背景に選ぶのはホテル内のシンメトリー(左右対称)。さらにカメラを直線的に引き、あるいは寄っていくとことで奥行き間を演出しています。そこに与える時間的な間がさらに観る者の緊張感を高めます。このあたりはゴシック・ホラーの趣十分。しかしカットは意外にもオーソドックス。すべてが人間の目線で撮影されているのです。登場人物の目が自分の目線上に飛び込んでくる。その恐怖が乗り移ったかのような印象すら受けます。ゆっくりとしたカメラの移動もそうですが、キューブリックの完全主義者ぶりが実によく分かる一本でもあると思います。 最後、狂気のためにみずから滅んで行くジャック。果たしてジャックは魔物にとり憑かれたのか? それともみずから狂気へと奔ったのか? 最後に映る60年前の舞踏会の写真。そこにはジャックそっくりの姿が。彼は当時のホテルの管理人。それが意味するものは何なのか? 本作でもキューブリックははっきりとした答えを描くことはありません。人間の中には得体の知れない狂気が潜んでいる。それが環境によって正体を現し、そして成長する。人間の狂気が増幅されてゆく恐怖が見事に描かれていたと言えるでしょう。恐怖映画史上五指に挙げられる傑作であることには間違いありません。 |
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