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ダイヤルMを廻せ!Dial M For Murder(1954年/アメリカ/105分)
cinema review ![]() STORY
アメリカ人推理作家マーク・ハリディがトニー・ウェンディスと妻マーゴのアパートを訪れる。マーゴはマークを友人だと夫に紹介するが、実はかつての浮気相手だった。当時、夫トニーとの仲は冷え切っていた。が、トニーはある時から態度を一変。マーゴのすすめに従い、テニスをやめてスポーツ用品会社に働きに出はじめ、マーゴにも優しくなる。夫の改心を知り、二人は別れたのだった。
しかしマークには未練があり、アメリカからラブレターを送り続けていた。その間、マーゴは奇妙な体験をする。マークからのラブレターが盗まれたのだ。その後ジョン・キング宛に50ポンドを送るようメモが届けられ指示に従う。ところが手紙は戻らず、送り場所へ行ってみたところ、そんな住人は存在せず、金も放置されたままだった。 その夜、芝居へ出かけたマークとマーゴ。一方トニーはC・A・スワンという大学時代の先輩を家に招く。当時からスワンは素行の悪さで有名だった。トニーは1000ポンドで妻の殺害を依頼。トニーはマーゴの浮気と離婚の決意を知って妻殺害を画策。準備を進めていたのだ。裕福な妻の財産で贅沢をしているトニーには離婚は考えられなかった。 翌夜、トニーとマークはテニス選手会のパーティへ出かける。その時トニーはマーゴの鍵を抜き取り、アパートの階段のマット下に隠し入れる。やがてマーゴが留守番中に、スワンはその鍵を抜き出し部屋に侵入。トニーからの電話を待つ。そして11時過ぎ。トニーは家に電話。ダイヤルMに指をかける。家ではマーゴが寝室から出て居間の電話を取る。その背後からスワンが襲い掛かる。ことが終われば、スワンが口笛を吹いて電話は切れるはずだ。が、うめき声の後、電話から聞こえてきた声は妻マーゴのものだった ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
ヒッチコック中期の傑作サスペンス。原作はフレデリック・ノットの戯曲。すでに舞台で評判を取っていたようで、さすがに脚本のデキは秀逸。素人にもはっきりと分ります。それがヒッチコックの映像手法と結び付き、見事にはまったと言うべきでしょうか。派手なシーンがまったくないにもかかわらず、終始目が離せない展開。抜群のおもしろさを演出しています。ちなみに、この後に手がけるのが「裏窓」。以降十余年にわたり最盛期を迎えることになります。
「ダイヤルM」とは、電話機に刻まれたMの文字。つまりは主人公の家の電話を象徴した符号。遺産欲しさに妻マーゴ(グレース・ケリー)の殺害を画策した夫トニー(レイ・ミランド)は、無頼者の元学友スワン(アンソニー・ドーソン)に妻殺害を依頼。自分は外でアリバイをつくります。そして妻が一人でいる家に電話。妻が出たところをスワンが襲います。殺害後、スワンは口笛を吹いて電話を切る段取り。が、聞こえてきたのはマーゴの「警察に通報を ・・・」という消え入りそうな声。マーゴは必死につかんだはさみでスワンを刺し、殺してしまっていたのです。 何と言ってもこの静かな緊迫感が見事。舞台のほとんどはアパートの一室。にもかかわらずまったく単調感はありません。その原因のひとつは会話のおもしろさ。片方の人物が疑問を投げかけ、片方の人物が答える。一体どう答えるのか、次にどんなせりふを発するのか。見る者は常にその興味にひかれることになります。会話のサスペンスとも呼べる驚異的な脚本と言えるのではないでしょうか。 泥棒に対する正当防衛と思われた事件。が、ハバート警部(ジョン・ウィリアムス)は鋭敏ゆえに、事件の矛盾に気付きます。犯人はドアから入ったと断定される。でもどうやって入ったのか? 警部はマーゴが入れたと推理。実はスワンのポケットの中から手紙が見つかります。それは、浮気相手マーク(ロバート・カミングス)からマーゴへのラブレター。スワンは脅迫していたのではないか? そしてマーゴがスワンを招き入れて仕組んだ殺人では、と確信。が、すべてはトニーが仕組んだ罠だったのです。 不倫好きのヒッチコックにはおあつらえ向きの設定。しかしヒッチコックには同じモチーフを使いまわす癖があって、それゆえに、本作がヒッチコック前半の総決算的な位置づけとなるわけです。特にマーゴが死刑となって無罪を主張するイメージシーンは、「白い恐怖」のシーンとそっくり。この点、どうも、ヒッチコックには、職人気質というよりも、したたかなビジネスマンを連想させる要素があります。 あまりにも有名なラスト10分間の流れはもはや説明不要でしょうか。驚くべきことに、物語はまず種明かしをしてしまいます。ハバート警部はついに真相を悟ります。スワンは鍵を一つも身に着けていなかったことに気付いたのです。自分の家の鍵すらない。"スワンの家の鍵" はどこへ行ったのか? そこではっと気付きます。ここで物語は、これまでただ一点隠してきた事実、鍵をめぐる謎を観客にばらすことになります。そして警部は最後の賭けに ・・・。見る者はすべてを分っていながら、それでも緊張して手に汗してしまう。ヒッチコックの手腕の凄さを改めて実感できるのではないでしょうか。 不倫を正当化するような点や、作家マークがトニーを犯人に仕立て上げようとするくだりなど、反道徳的な暗さを帯びているのは前半のヒッチコック作品の多くに見られる特徴。おもしろい映画には毒がある、とは言い過ぎでしょうが、本作でもまた、その一端を見ることができるようです。 |
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ヒッチコックの転換点ともいえる1954年。この次の「裏窓」は前半にありがちだった内面的な影を一掃。「北北西に進路を取れ」、「知りすぎた男」、「サイコ」でピークを迎えることになります。ちなみに本作は1998年「ダイヤルM」としてリメイク。主演はマイケル・ダグラスとグフィネス・パルトロウ。かなりのアレンジが加えられているので比較して見るのも一驚です。
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