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逃走迷路

Saboteur (1942年/アメリカ/108分)

[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[脚本]ピーター・ヴィアーテル、ジョーン・ハリスン、ドロシー・パーカー
[撮影]ジョセフ・バレンタイン
[音楽]フランク・スキナー
[出演]プリシラ・レイン、ロバート・カミングス オットー・クルーガー、アラン・バクスター、クレム・ベヴァンズ、ノーマン・ロイド、アルマ・クルーガー、ヴォーハン・グレイザー

[内容]

 軍用機工場が破壊工作により火事。消火活動に当たった工員バリーが工作員と誤解される。バリーは消火の際に一緒にいたフライが犯人だと悟るが、そんな人物は名簿にないという。そしてバリーは警察の手を逃れて逃走。無実を晴らすべくフライを追い始める ・・・。ヒッチコック監督中期のサスペンス大作。冤罪×逃亡×スパイもの、と、十八番のモチーフを重ねたエンターテイメントの傑作。さすがに圧倒的な面白さを誇り、アメリカ時代初期の代表作とも言える。
[評価]★★★★☆

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STORY

 ロサンゼルス、軍用機工場。工場で働くバリー・ケーンが同僚のケンと食堂に向かう途中、ケンが見知らぬ工員にぶつかる。男は手紙を落とし、そこにはフランク・フライとの名前が記されてあった。その後工場で火事が起き、バリーとケンは消火に向かう。が、ケンは火事で亡くなってしまう。
 すぐさま調査が始まると、ケンの消火器にはガソリンが入っていたことが判明する。そして消火器を手渡したのがバリーだったため、破壊工作員の疑いをかけられてしまう。消火器は現場にいたフライから受け取ったものだったが、工場にはフライなる工員は存在しないというのだ。
 警察に追われる身となったバリーは、無実を晴らすべくフライを探すことにする。そこで手紙にあった住所、田舎町スプリングビルにあるディープ・スプリングス牧場を思い出して向かう。迎えた牧場主チャールズ・トビンはフライを知らないと言うが、偶然発見した郵便物の中に、フライ宛の手紙を発見する。その中には、ソーダシティでニールスンと落ち合うと記されていた。トビンも仲間だったのだ。
 その時トビンが勘付き警察に通報。一旦は捕まり手錠をかけられるが隙を見て逃走する。そして更なる手がかりを求めてソーダシティへ。が、途中、追っ手が迫り、通りがかった山小屋に助けを求める。住んでいたのは盲目の老人フィリップ・マーティンで、バリーの無実を信じ、姪のパトリシアに逃走を手助けするよう指示する。
 ところが、パトリシアはバリーを信じず警察へ行こうとする。バリーはやむなくパトリシアを拉致し、ソーダシティへ向かう。そこは、廃墟と化した工場があるだけの無人の町だった ・・・。

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COMMENT

 "Saboteur" とは破壊工作員のこと。内容はイギリス時代に製作した「サボタージュ」、「三十九夜」、「第三逃亡者」を足したようなストーリーとなっています。また、ラストの自由の女神でのシーンは有名となりましたが、このモチーフは後に「北北西に進路を取れ」のラシュモア山のシーンに応用されました。ヒッチコックは同じモチーフを使い回すことが多く、成功パターンを重視するしたたかさがここでは顕著に見られます。
 物語の主人公は軍用貴工場の平凡な工員バリー(ロバート・カミングス)。ナチス破壊工作員フライ(ノーマン・ロイド)により工場は火事で破壊され、親友まで殺されてしまいます。犯人の疑いをかけられたバリーはフライを追います。手がかりはフライが持っていた手紙に書かれたある牧場。が、牧場主(オットー・クルーガー)もまたスパイだったというわけです。
 舞台はロサンゼルス(西海岸)から中部(スプリングビル→ソーダシティ)へ、そしてニューヨークへとダイナミックに移って行きます。終盤には戦艦アラスカ(架空)の転覆シーンといった大がかりなスペクタクルシーン。そしてラストは自由の女神での攻防戦となります。
 ただ、この後半でややもたつくのはご愛嬌でしょうか。特にサットン夫人邸での一連のシーンは、主人公は逃げれば逃げられた(パーティが終わるまで待つだけでよい)、スパイ組織は主人公たちを捕まえれば捕まえられたはず(人違いとわかった時点でもなぜか捕まえない)、との感が強く、つまりは散漫な雰囲気となっています。
 中盤には当時の名作「フランケンシュタインの花嫁」もどきのシーンが登場。山小屋に住む盲目の老人(ボーハン・グレイザー)がバリーに助け舟を出します。これが音楽好きとあってさすがにパクリっぽいモチーフ。これもまたヒッチコックのサービス精神の表れかもしれません。とにかくもここでようやくトップ・クレジットであるヒロイン、パトリシア(プリシラ・レイン)が登場。セオリー通り、最初は主人公を疑い反目しますが、おかしなサーカス団での出来事を機に、主人公とスパイ団を追うことになるわけです。前半シリアスさが強かった物語だけに、この辺りでユーモラスさを出して見る側に一服与えるあたりは、さすがストーリー・テラーぶりを発揮したと言えます。
 今回は、さほど二人のロマンスは強調されていませんが、二人での逃避行のシーンが多いので情緒的な雰囲気はしっかりと醸成されています。これもポピュラリティを高くした一因でしょう。とにかくも当時としてはスケール感の大きなサスペンス映画で、スピーディーにしてスリリング。面白さに限って評すれば、ヒッチコック・アメリカ時代(1939〜)初期の、といより当時のサスペンス映画の代表作に挙げてもいいような気がします。

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