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ぼんくら(ぼんくら)
- 著者 : 宮部みゆき
- 発行 : 講談社文庫(全2巻)
- あらすじ ...
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本所深川。定町廻り同心・井筒平四郎は大きな手柄を立てることもなく、かといってそれを恥じることもなく“適度にいい加減”に日々務めに励んでいた。その受け持ちの一角に十六世帯が住む鉄瓶長屋がある。ある時、八百屋の太助が横死する。妹・お露は殺し屋が来たと言い張るが不審な人物の出入はまったくなかった。
平四郎はお露のあるうそに気づくが、間もなくお露は病気の父と共に長屋をあとにしてしまう。さらに、なぜか人望篤い長屋の差配人(大家)・久兵衛も失そう。いるはずのない殺し屋に殺されるのを恐れて逃げたとのうわさだ。一ヶ月後、長屋の地主、湊屋総右衛門は、かわりに佐吉という若者を派遣してくる。湊屋の遠縁にあたり二十七歳だというが、差配人としては異例の若さだった。 半月ほどして。今度は桶職人の権吉が博打で借金をつくり、娘・お律を岡場所に売ろうとする騒動が持ち上がる。しかし佐吉の気遣いでお律は売られる前に家出。長屋の住人は若い佐吉を侮っていたが、平四郎はその機知に驚いていた。 やがて、捨て子らしき子供・長助が長屋に紛れてくる。佐吉が預かることになったが、平四郎が調べてみると、その父親は何と長屋の住人の一人だった。結局気まずくなった父親は子供を残して長屋を去ってゆく。またある時、大工の八助が突然どこかから持ってきた壺を拝み始める。周りにも熱心に布教する八助に佐吉と平四郎は頭を抱えた。しかししばらくして、八助一家の姿は忽然と長屋から消えうせる。 今まで平和だった鉄瓶長屋。短い間に立て続けに起こる変事に平四郎は不審を抱く。そして、わざわざ若い差配人を送り込んできた湊屋に疑いの目を向け始める。何か企みがあるのではないか? 半月後、平四郎はひそかに幼なじみの隠密同心・辻井英之介に連絡を取った。すると、話を聞いた英之介は、湊屋には秘密が隠されていると推理。探索を約束する。その二十日後、平四郎の許に英之介からの手紙が届く ・・・。
- コメント ...
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宮部みゆきのミステリー時代劇。江戸深川の鉄瓶長屋なる市井を舞台に、様々な事件と人間模様を描きます。これがちょっと変わった構成で、中盤までは様々な事件を連ねた短編集ともとれます。実際、最初の5話は、30ページほど(文庫版)からなる連作集と見て何ら違和感はありません。しかしその後、第6話の「長い影」では420ページ以上を費やしており、これまでの話がすべて一つの事件に帰結することを明らかにしています。そして最後には、作者十八番の緻密さと人情味にあふれたプロットに脱帽することになります。ただし、推理色濃密ため、複雑さからくるプレッシャーは覚悟しなければなりません。
一方、もうひとつの本作の特徴としては、登場人物の面白おかしなキャラクターがあげられます。これらキャラクターをながめているだけでも十分楽しめるような気がします。物語の主人公は北町奉行所の同心、主人公の井筒平四郎。タイトルとなっている「ぼんくら」とは、この平四郎のことを指します。この主人公、有能なわけではなく、仕事熱心なわけでもないという、いわば小役人。が、どうしたことか、鉄瓶長屋の事件にはどっぷりと首をつけることになります。そのかわり、その手下・小平次はさぞ気の利いた優秀な従者なのだろう、と勝手に思い込むのですが、そんなことはなく、ただの中間。 さらに後半、やや小慣れて来たかと思えば、ここで新たな登場人物が登場。兵四郎の十二歳の甥、弓之助がそれで、美少年で妙に大人びており、卓越した推理力を披露します。が、測量オタクの上にいまだおねしょの欠点も。他にも、所の親分で岡引の政五郎、人間録音テープのでこ、女傑のお徳など。登場人物は多岐にわたりますが、まずもって誰が誰だったか、などという混乱は皆無です。巧みなのは、それぞれの人物が、平四郎の人物評としてさりげなく描かれているところです。読者はそのたびに平四郎に愛着を深めていくことにもなります。このあたりはさすがに作者の実力をうかがい知ることができます。 物語は、平和だった鉄瓶長屋で次々と事件が起きて店子が去って行く出来事を描いたもの。ふと、これに疑問を持った平四郎は、すべての出来事は偶然ではないと確信。わずかな人脈をフルに活かしつつ事件を調べ、ついにある陰謀へとたどり着くことになるわけです。いずれのエピソードも推理物として十分に読み応えがあるので、かなりの密度を感じ取ることができます。 面白いストーリー、ミステリーとしての重厚感、キャラクターの魅力、と、大変に楽しめた作品。推理物としての複雑さを除けば、久々に出合った快作のような気がします。ちなみに筆者は、中ほどからは止まらず、久々に徹夜して読了した一篇でもあります。
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