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玩具修理者

(がんぐしゅうりしゃ)

著者 : 小林泰三
発行 : 角川ホラー文庫
あらすじ ...
【玩具修理者】
 "私" がその女性に会う時、彼女はいつもサングラスでした。ある日、理由を尋ねると昔体験した事故のことを話し始めます。
 その名を "ようぐそうとほうとふ"。壊れたものを何でも直してくれる。でも頼んだところしか直さない。ある暑い夏の日、赤子の弟を連れていると一緒に階段から落ちたのだとか。死んでしまった赤ちゃんを "直して" もらおうと、ようぐそうとほうとふの元へ行った彼女。途中で気を失い、そして目覚めた時 ・・・。
【酔歩する男】
 サラリーマン血沼壮士(ちぬそうじ)はパブで飲んでると、こちらをうかがうみすぼらしい男が。尋ねてみると小竹田丈夫(しのだたけお)と名乗り、自分を大学時代の親友だと言うと、次々と自分のことを言い当てます。しかし血沼にそんな親友を持った覚えはありません。自分の記憶がおかしいのか、こいつが自分をからかっているのか。さらに小竹田を問い詰めると、彼は過去に起こった不思議な話を始めるのでした ・・・。
コメント ...
 本書は、第二回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作『玩具修理者』と、中篇『酔歩する男』の二本を収めた作品集。実は何とも対極的な二本。終始恐怖のイメージを読者に強要し、純然たるホラーと言っていい前者。一方、時間とは何か、次元とは何か、その哲学と真理に挑戦し、SFの新境地と言っていい後者。まあ、一冊の本としてのアンバランスさはあるかもしれませんが、二本ともおもしろさにおいても質においても、そして個性的という点でも抜きん出た作品と呼べます。
 『玩具修理者』は、幻想的ながらも大変恐い話。"死んだ猫を引き摺る"、"腐りかけた赤ちゃん"、"ずり落ちた顔の肉"など、かなりきつい表現が続きます。壊れたものを何でも直すという"ようぐそうとほうとふ"。生き物まで?、という驚き。しかしそうなるとおもちゃと生き物の境は何なのか。そんな投げかけまでしています。ミソなのは、頼んだところしか直してくれない、というところ。着想の見事さ、ストーリーのおもしろさ、恐怖の演出。と、いずれもが大変質の高いもの。短い作品で盛りだくさん、といった感もなく、ほどよいゆとりがあって読みやすさも十分。
 ちなみに映画化にもなっていますがこちらはファンタスティックなホラー。良作です。違った趣で再び楽しめると思います。
 『酔歩する男』は、冒頭のキャッチが見事。自分を大学時代の親友だという男。しかし自分には全く見覚えがない。この謎に読者はいきなりはまってしまうのです。
 中盤、手児名(てこな)なる女性が登場し、物語はラブストーリーの様相を呈してきます。二人の女性を取り合う小竹田(しのだ)と血沼(ちぬ)。しかし手児名が亡くなると、一気にタイムトラベルものへと展開していきます。時間を跳躍する理屈。タイムパラドックスへの挑戦。やがて、時間とは何か、次元とは何か、意識とは何か・・・、哲学的とも思える理論を小竹田を通して語らせていきます。果たして時間は本当に連続して存在しているのか。が、最後にはタイムトラベルは科学や技術ではないのだとも言っています。ラストは血沼の日常を描いて、不条理ものに近いシーンで幕を閉じます。
 一つ一つのモチーフには新しさはありませんが、タイムトラベルの解釈には、おーっ、とうなるところがあります。やや理屈っぽい作品との印象が強いのですが、その代わり読みごたえは十分でしょう。
 その後の著者の作品の流れは、どうもこの二作品から出ているのかもしれません。グロテスクな面と理知的な面。一方は気に入ったがもう一方は気に入らない、なんて人ももしかしたらいるかもしれません。それでも二作共インパクトは強烈で、実に不思議な魅力をもった作品であることに疑う余地はありません。読み終わったあとは、頭の中にこびりついてしまうのではないでしょうか。

・・・ 関連作品 ・・・
 「玩具修理者」は田中麗奈主演で映画化されたことで有名です。が、こちらはややファンタスティック。
 一方コミック化も行われていてこちらも好評。小説、映画、コミック、とそれぞれに違ったカラーで楽しめます。

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