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播磨灘物語(はりまなだものがたり)
- 著者 : 司馬遼太郎
- 発行 : 講談社文庫(全四巻)
- あらすじ ...
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播州姫路に流れついた黒田重隆は、財とともに二百人ばかりの小勢力を築きあげます。子・職隆(もとたか)はその勢力をもって御着城主・小寺藤兵衛に仕官。有能な家臣を持たなかった藤兵衛は職隆に小寺姓とを名乗らせ、やがて一番家老に任命します。が、さらに、子・官兵衛の才を見抜いた職隆は、二十二歳の息子に家督を譲り、みずからは若くして隠居することになります。
播州で地味な生活を送る官兵衛はたびたび京へも上るようになります。そして南蛮寺へ通いはじめると洗礼を受けてキリシタンとなり、それが縁で幕臣・和田惟政(これまさ)や細川藤孝とも知り合います。折しも十三代将軍足利義輝の時代。しかし下剋上でのし上がってきた三好党や松永久秀により実権を奪われ、ついに義輝は暗殺されてしまう時でした。 ほどなく僧になっていた義昭を次期将軍に担いだ藤孝と惟政。官兵衛は織田信長の伸張を予期し、尾張へ行くよう助言します。一旦は越前朝倉を頼った義昭でしたが、結局は信長を頼り、すると信長は義昭を奉じてたちまち攻め上ってしまいます。 一方、別所氏、三木氏、小寺氏など、未だ小勢力がひしめき合う播州。官兵衛は信長につくことが生き残る道と確信を持ちます。しかし毛利家を恃みにする他の豪族たち。播州でただひとりの織田派となった官兵衛は、意を決して、他家の説得に動き始めたのですが ・・・。
- コメント ...
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竹中半兵衛とともに、秀吉の名軍師として有名な黒田官兵衛孝高(よしたか)。本書はその生涯を振り返った歴史小説。が、その人物像についてはどうもしっくりとこないものを感じます。その前半生の播磨時代では野望薄く無欲さが目立ち、下克上が盛んな時期にもかかわらず、ひたすら主・小寺藤兵衛を盛り立てていこうとしています。が、後年、石田光成が挙兵に及ぶとにわかに兵を募り、九州を切り取る動きをしているのです。どうも得体の知れない人物と見れます。
さらに、子・長政が徳川家康に感謝されて右手を押し抱かれたと聞いた時、"そちの左手は何をしていたのか" と言ったのは有名な話。つまりは、なぜ家康を刺さなかったのか、絶好の機会ではないか、ということなのです。この話はちょっと信じ難いものですが、"ついに如水(官兵衛)が何者であったかわからなかった" という一節が、周りが見た官兵衛の得体の知れなさを象徴しているように思えます。現に秀吉にしろ家康にしろ、真実はともかく官兵衛の野望を疑っていた節があったことは確かなようです この変化において、友と思っていた荒木村重の謀反と獄中生活、さらにはわが子に死を言いつけた信長の非情さ。この一時期が官兵衛を変えたきっかけであると見えなくもありません。あるいは、強烈な野望を抱きながらも、あとがきにあるように、みずからを "大勢力の点景" として位置づけてしまったものか。いずれにせよ、官兵衛の得体の知れなさは現代でも健在のような気がします。 物語は、黒田家が近江から播磨へ流れ着くくだりから始まります。 "しばらく官兵衛は出てこない" と冒頭にあるのですが、司馬作品でしばらく主人公が登場しないのはいつものことで、内容とは別のところでおかしさを感じてしまいました。それはともかく、官兵衛が歴史の表舞台に登場するのは、さほど名門でもない小寺姓を名乗り、信長支持のための工作を始めるところからです。 "縦横家" とは、まさに古代中国の外交官。弁と説を持って諸国をまわるという人物。が、一方では詐術に似たいかがわしさもあわせ持っていたようです。いずれにせよ、官兵衛についても同様で、その工作がいかに綱渡りであったかが実に分かりやすく描かれています。やがて官兵衛の策は破れ、最後には自分が守り抜いてきた御着城主・小寺藤兵衛に裏切られ、謀反人・荒木村重の囚われ人となってしまうのです。 この時代、官兵衛が生き永らえたことは奇跡と言っていいでしょう。主・藤兵衛が逃亡すると、竹中半兵衛と入れ替わるようにして秀吉の軍師となり、官兵衛の名は鮮やかに諸国にとどろくことになるのです。しかし、官兵衛は常に秀吉との距離をひとつ置いていたようです。秀吉から恐れられるのを避けようとしたのか、俗事への興味が薄かったのか、ここも今ひとつ明らかではありません。一方、秀吉が暴走し始めた(朝鮮出兵や世継問題)のも、軍師を遠ざけるようになってから。秀吉という人物の真の姿が顕わになるのですが、本作では秀吉の人物像の本質についても冷静な目が注がれているのは興味深いところです。 生涯小大名に甘んじた官兵衛ですが、おもしろいのは、黒田家というのは代々若くして隠居し、子に家督を譲ってしまっていることで、さらにはその度に大きくなったという事実があります。官兵衛の子・長政は五十二万石あまりの太守となるに至るのですから、一気に官兵衛の四倍もの領地を得たわけです。しかもそれぞれの人物に、(少なくとも表面上は)私心が薄く、そんな家が戦国時代を生き延びたこともふしぎといえばふしぎでしょうか。その長政については、本作では語られませんが、後に後藤又兵衛の話にも出てきます。思えば、この人物も名将なのか愚将なのか分らないところがあります。黒田家はそんな宿命的な血筋なのかもしれません。 伝説化した半兵衛に比べ、多分に現実臭のするのが官兵衛ではないでしょうか。が、驚くべきことに、その活躍した時期はあまりに短く、しかも不透明です。それこそが表に姿を現さない軍師の本質であるとも呼べるのですが、反面、そのことが、常に主に気を遣わねば危険な存在と見られる軍師の悲哀でもあります。その本質を本作では十分に垣間見ることができます。元新聞連載ということで、淡々としたつくりではありますが、裏舞台で活躍した官兵衛の姿を通して、戦国時代の裏面を見る楽しみが、本書にはあるのではないでしょうか。
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官兵衛と切っても切れないのが秀吉。司馬作品には秀吉の出世話を描いた「新史太閤記」があります。
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