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龍は眠る(りゅうはねむる)
- 著者 : 宮部みゆき
- 発行 : 新潮文庫
- あらすじ ...
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豪雨の夜、記者の高坂昭吾は出張先で、成り行きで稲村慎司という十六歳の少年を乗せることに。途中開いたままのマンホールの蓋と子供の傘を見つけた二人。ほどなく子供が行方不明であることを知ります。誰かが蓋を開けたマンホールに子供が落ちた。豪雨の中子供の捜索が夜を徹して行われますが見つかりません。
翌日、様子がおかしい慎司を見て高坂は「お前が蓋を開けたのか」、問い詰めます。すると慎司は、「僕は超常能力者(サイキック)」と高坂に告げます。そして、信じようとしない高坂に、犯人が二人であること、車の車種とナンバー、動機と行き先を話しはじめます。そればかりでなく、高坂が子供の頃遭った交通事故、かつての恋人小枝子のことまでも言い当てたのです。 慎司の言葉を疑いつつも犯人を捜す高坂。そしてついに二人は犯人を探し当てます。記者の勘で相手が犯人であることを確信した高坂。しかし慎司の激しい詰問に、相手はかえって頑なに否定するようになってしまいます。 そして事件から一週間。子供は発見されないまま。犯人が自首したという話もありません。そんな時、織田直也という青年が高坂の雑誌社を訪れてきます。慎司の従兄だと言う直也。「あなたは騙されたんです。」 直也が明かしたトリックは理路整然としていて納得できるものだったのですが・・・。
- コメント ...
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近年は社会派として定着した感がある宮部みゆきのSFミステリー。超能力を持つ少年の悲哀を浮き彫りにした人間ドラマでもあります。宮部作品では時代劇も人情味があふれたものが多く好きなのですが、現代ものでは本作が特別お気に入りの一本。他の作家にも言えることなのですが、悲劇指向、ペシミズムにはしる作品が多くて、どうもバッドエンドが苦手な筆者もりじょうとしては閉口してしまいます。本作にもその傾向はあるのですが、読後の爽快感は娯楽作品のそれに近いもの。やっぱりハッピーエンドがいいですね。
物語は、ある記者がひとりの少年と出会うところから始まります。子供のマンホール転落事故をきっかけに、人の心を読む少年の超能力を目の当たりにすることに。が、少年の従兄だと言う男がやってきて、それはペテンだ、と記者に告げるのです。その説明は理路整然としたもの。混乱する記者。果たして少年の能力は本物なのか、偽物なのか。 物語は一様ではありません。一つの事件を追って構成されているのではなく、いくつかの別々のモチーフで構成されているのです。序盤、かなり長い時間をかけて、幼児失踪事件を通した記者と少年の絡みが描写されていきます。おかげで、この二人の印象は見事に読者の心に活き活きとした姿で映し出されます。中盤では記者や少年の悲しい過去が振り返られ、ようやく二人を取り巻いている脇役陣が登場してきます。そして、織田直也の正体が徐々に明かされていくと、物語の厚みがぐっと増していきます。さらに、この間、記者の身に起こる不可思議な脅迫事件が描写されます。それは終盤では誘拐事件へと発展し、意外な展開で読者をあっといわせることになるわけです。 とりわけ力が入っているのが記者の女性関係でしょうか。かつての恋人小枝子、彼に思いを寄せる女性社員、そして口の利けない七恵。それぞれに別々の重要な役割を担っているのですが、それが最後に一つのモチーフに集まっていくのです。しかしロマンスが強調されているわけではないところなどは、バランス感覚の妙と言えるのではないでしょうか。あくまでも物語は"超能力"という一点に注視し続けているのです。 ミステリーという形を借りて、超能力の悲哀を表現した本作。「龍」とは万人の心に眠る怪物。ひとたび目覚めたなら、それを人は制御することはできず、理解することもできない。だからこそ、超能力にとって、"信じる信じない"は無意味であり、ただ"そこにあるもの"なのだと物語では言っています。作品は文庫本にして500ページを超える大作。といっても近年では珍しくなくなりました。それでも、微細にわたる専門的描写を抜きに、しかも決してテーマをはずさず、読者を飽きさせずに自然な描写を貫いているのはさすがです。超能力ものが得意な女史。とりわけ本作品はお勧めの一本です。
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・・・ 関連作品 ・・・
宮部作品は超能力ものが多くどれもおすすめです。 「魔術はささやく」は催眠能力がモチーフ。「クロスファイア」は映画化されました。火を操る美女を矢田亜希子が熱演。 「蒲生邸事件」は戦前にタイムリープをしてしまった青年の話。人間ドラマをベースにした感動作です。
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