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太公望(たいこうぼう)
- 著者 : 宮城谷昌光
- 発行 : 文春文庫(全三巻)
- あらすじ ...
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ある日、商の国の兵が羌(きょう)の一族に押し寄せてきます。一族のほとんどを殺されながら、少年望は、孤竹へ逃げよとの父の言葉に従うべく、仲間の子供たちと一緒に逃げ延びます。途中、敵の一つであったはずの鬼方の長"鬼公"の助けもあり、はるか孤竹へたどり着くことができます。
この地で、望は孤高の老人と出会い、文字を学び、超人的な剣の技をも身に付けることになります。同時に、大国商を倒すという決意が大きく膨らんでいくのです。やがて望は孤竹を出て、旅をしながらも人脈をつくり、力を蓄えていきます。一方、商の受王は、賢臣を退け、また、傾国の美女妲己(だっき)を寵愛するようになり、徐々に崩壊への道へと歩むことになります。 ある時、鬼公たち有力な長たちが謀反を企てますが、事前に察知されてしまいます。望も事態を察して助けようとしますが間に合いません。そして、受王の"酒池肉林"の宴に招待された際、逆に殺されてしまうのでした。これを逃れた有力者に"周公"がいましたが、讒言により捕らえられ、強制労働所へ送られてしまいます。 望は、商を倒せる最後の有力者周公を助けるべく、周の公子や重臣たちを動かし、助命嘆願のため西国の諸侯に使者を送ります。その努力は実ることとなり、周公は釈放されます。そして、不可能といわれた魔術の国"召"との同盟さえ成し遂げた望は、いよいよ大国商へ決戦を挑むことになります。
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太公望は古代の英雄にして名軍師。太公望が登場する「封神演義」は世界最古のSF小説とも言われているそうです。太公望の時代を創造するには、今より二千年も遡らなければなりません。そこから千年進めてもまだ紙は発明されていません。ところが、わずかと思われる資料から、商、周、召、鬼方といった国々の政治的な動きなどが事細かに描写されているのには驚きます。一方では感動的な冒険物語とも呼ぶこともでき、歴史ものを超えたおもしろさをも演出しています。
物語は、望の復讐劇が軸になっています。家族を殺されて逃亡。様々な苦難を乗り越えながら、剣の達人となり、鋭敏な先見性と天才的な戦略とで周王を援けついに商を破る。と、壮大な冒険物語です。この望の活躍がまたすごい。あるときは盗賊を捕まえ、あるときは追われている美女を助けたりと。まあスーパーマンといっても良いでしょう。それにちょっとした恋の話もあります。 もうひとつ楽しいのは、太公望が降りかかる魔法を破っていくシーンなど、魔術的、幻想的なモチーフもちらほら扱っていることです。この辺は「封神演義」に通じるところがあります。娯楽性も抜群、サービス満載のストーリーです。 著者は宮城谷昌光氏。読みやすいですね。歴史を扱う作家の先生には、好んで当時の言葉を使う方もいらっしゃいます。古語辞典でも引きながらでなければまるで別の国の言葉、なんてことも。内容とは関係ないのですが、文春文庫の文字の大きさも大変見やすい大きさです。思えば、昔の文庫の中には蚤のようなのもありましたよ。その代わり値段も安かったですけど。 それはともかく、ストーリーテラーという点では、池波正太郎、柴田錬三郎、山本周五郎など、歴代の大家と肩を並べる、といっても過言ではないと思うのです。本作も、会話の多用、簡潔な描写、盛りだくさんのエピソード、と娯楽性の高い作品だと思います。氏の作品は長編が多く、本作も文庫本にして三巻と長めですが、まず眠らせてくれません。歴史に興味のある人なら、最後まで止まらないおもしろさを体験できることでしょう。 ただし、著者の特徴、というか歴史作家の特徴なのですが、人物描写はやや単調です。ほかの作品にも似たような人物像や行動パターンの登場人物が登場してきます。ともあれ、古代中国を扱い小説は貴重と言えるのではないでしょうか。歴史イベントを追う読み物はありますが、本書のように、歴史ものを維持しつつエンターテイメントとして再構築された物語はあまり見られないように思います。その意味では、中国古代史に触れる絶好の機会と言えるかもしれません。
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・・・ 関連作品 ・・・
著者の作品はどれもおもしろく読み応えも十分。本作同様冒険ものに近いのが「孟嘗君」。 個人的には「晏子」もおすすめ。いずれも古代中国(春秋戦国時代)を舞台にした歴史ロマン大作です。
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(c) morijoh |